大判例

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岐阜地方裁判所 昭和24年(行)7号 判決

原告 大野金左衞門

被告 岐阜県本巣郡席田村

一、主  文

原告の請求を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、請求の趣旨

原告は、「被告村の議会が昭和二十四年十一月二十二日なした、糸貫中学校校舍建築費として金二百十九万四千百十八円を負担する旨の議決は無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を決めた。

三、事  実

被告村は昭和二十二年五月十五日岐阜縣知事に対し同年四月十八日付被告村第十七回村議会議事録の謄本を添付して組合立中学校設置承認申請書を提出し同月十六日その承認を得、次で、被告村は昭和二十二年九月十三日岐阜縣知事に対し、昭和二十二年六月二十五日付被告村第二回村議会議事録の謄本を添付して一部事務組合設置許否申請書を提出し、同年十二月六日その設置許可を得、しこうして、昭和二十四年十一月二十二日席田小学校において開会された席田村村議会で、金二百十九万四千百十八円の歳入を席田村村民税として徴集し、これを糸貫中学校校舍建築費に支出する更正予算が議決せられた。しかしながら、右第十七回村議会議事録には、昭和二十二年四月十八日午後一時席田小学校において村議会が開催され、町村組合立中学校を設けるの件、席田村外二箇村中学校組合規約設定の件、組合会議員選挙の件を議題として一括上程して、議長欠席のため副議長大野金左衞門議長となり、異議なく原案通り議決した旨の記載があるが、右日時村議会が開催された事実はなく何人かが右の如く村議会議事録を僞造したものであり右第二回村議会議事録には昭和二十二年六月二十五日午後一時席田小学校に於て村議会を開催し、町村組合本巣那糸貫中学校組合規約設定の件を議題として上程し、原案通り議決した旨の記載があるが右日時村議会が開催された事実なく何人かが右の如く村議会議事録を僞造したものであるから、このような僞造した村議会議事録の謄本を添付してなした被告村の組合立中学校設置承認ならびに一部事務組合設置許可申請に基く岐阜縣知事の前記承認ならびに許可は無効である。從つて組合立中学校の設立自体が無効であるから、かかる設立無効の中学校校舍の建築費を負担する村議会の議決もまた無効である。よつて原告は被告村の議会が昭和二十四年十一月二十二日なした、糸貫中学校校舍建築費として金二百十九万四千百十八円を負担する旨の議決は無効であることの確認を求めるために本訴に及んだものである。

被告は「原告の請求を棄却する」との判決を求め、答弁として次のように述べた。

被告村が昭和二十二年五月十五日岐阜縣知事に対し、同年四月十八日附被告村第十七回村議会議事録の謄本を添付して組合立中学校設置承認申請書を提出し、同月十六日その承認を得たこと、同年九月十三日岐阜縣知事に対し、同年六月二十五日附被告村第二回村議会議事録の謄本を添付して一部事務組合設置許可申請書を提出し、同年十二月六日その設置許可を得たこと、右第十七回村議会議事録および第二回村議会議事録にそれぞれ原告主張の通りの記載あること、昭和二十四年十一月二十二日席田小学校において開会された席田村村議会において金二百十九万四千百十八円の歳入を席田村村民税として徴集し、これを糸貫中学校校舍建築費に支出する更正予算が議決せられたことは認めるがその余の原告主張事実は否認する。

四、理  由

先ず本訴の適否について檢討する。被告村が昭和二十二年五月十五日岐阜縣知事に対し、同年四月十八日附被告村第十七回村議会議事録の謄本を添付して組合立中学校設置承認申請書を提出し、同月十六日その承認を得、同年九月十三日岐阜縣知事に対し、同年六月二十五日附被告村第二回村議会議事録の謄本を添付して一部事務組合設置許可申請書を提出し、同年十二月六日その設置許可を得、同年十一月二十二日席田小学校において開会された席田村村議会で金二百十九万四千百十八円の歳入を席田村村民税として徴集し、これを糸貫中学校校舍建築費に支出する更正予算が議決せられたことは当事者間に爭がなく、原告は右村議会議事録は僞造に係るものでその僞造文書の謄本を添付してなした組合立中学校設置承認申請ならびに一部組合設置許可申請に基いた岐阜縣知事の右承認ならびに許可は無効であり、從つて組合立中学校の設立行爲自体が無効であることを理由にその中学校校舍の建築費を負担する旨の村議会の議決が無効であることの確認を求めるために本訴に及んだものであることは原告の主張に照して明らかである。しかしながら本訴は次の点において訴訟法上の要件を欠き不適法たるを免れない。

裁判所法第三條によれば、「裁判所は、…………一切の法律上の爭訟を裁判し」とあり、行政に関する事件であつてもそれが法律上の爭訟である限り裁判所に出訴することができるが、それが法律上の爭訟でないならば特別の規定がない限り、裁判所に出訴することができないものといわねばならない。

ここで法律上の爭訟というためには、当事者間における具体的な権利義務に関する爭があり、具体的な法律の適用が問題になつていることを要する。およそ三権分立の原則からいつても、司法権は、行政権に対する一般的監督権を有するものではなく、單に当事者間における具体的な法適用の保障的機能を認められているにすぎず、司法権が行政に関して有する権限も、決して行政に関する一切の事件におよぶものではなく、当事者間における権利義務に関する爭ある場合に、具体的な法適用を保障することに限られると解すべきである。しかるに、村議会は本來普通地方公共団体たる村の意思機関として執行機関たる村長に相対し、村に関する事件につき村の意思を決定することをその任務とするものであり、例外的に地方自治法その他の法令により特にその権限とせられた事項を行うことがあるに止まる。

從つて村議会の議決は單に村内部の意思を決定するにすぎず、未だそれだけではその意思は外部に表示せられることなく、村住民の具体的な権利義務に直接関係するものでなく、村長がその議決の執行に当る時において始めて住民の権利義務に直接関係してくるものといわねばならない。從つて本件においても、前記予算決議に基いて村長が村民税を徴集する段取りになつてその徴集処分の違法適法を爭う時に始めて、住民と村との間において具体的な権利義務に関して爭いが生じ、具体的な法適用が問題になるのであり、單なる村議会の予算決議だけでは未だ住民の具体的な権利義務について爭いが生じ、具体的な法適用が問題になつているということはできない。從つて單に村議会の議決の有効無効を爭うだけでは未だ裁判所法第三條にいわゆる「法律上の爭訟」ということはできず、從つて特別の規定のない限り、(現在かような規定はない。)裁判所に出訴することができないものといわなければならない。

以上によつて明かなように本訴は結局訴訟法上の要件を欠き不適法たるを免れないから他の爭点について判断をするまでもなく、これを却下すべきである。よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第九十五條、第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 伊藤淳吉 越川純吉 石井敬二郎)

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